【法人化メリット・デメリットの前提知識】個人事業主と法人の5つの違いを税理士がわかりやすく解説

  • 事業を個人事業主と法人でやる場合は何が違うの?
  • 法人成りのメリット・デメリットでなんで生じるの?
  • フリーランスって法人成りしたほうがいいの?

こんなお悩みを現役公認会計士・税理士が解決します。

この記事の内容
  • 個人事業主と法人の具体的な内容の解説
  • 個人事業主と法人の5つの違い
  • 個人事業主と法人の違いのサマリー表
この記事の信頼性

xBridge Advisory代表(現役公認会計士・税理士)が本記事を執筆。

個人での起業や副業が一般的になってきた最近では、フリーランスという言葉をよく目にするようになりました。

フリーランスとは、企業や組織などの団体に属さず、個人で仕事を行う「働き方」をしている人のことです。

ただ、一口にフリーランスといっても、事業の運営方法は以下の二形態に大別されます。

フリーランスの事業運営の主な二形態

個人事業主:法人を設立せずに個人事業主として事業を運営すること

法人:法人を設立して、法人を通して事業を運営すること

厳密には、税務署に開業届を提出した人のみが法律上の個人事業主となりますが、ここでは法人との比較とのため、法人を設立せずに個人で事業を営む人全般を「個人事業主」と呼ぶことにします

フリーランスとして事業を運営する場合、どちらの形態を採用するかによって様々な違いが生じ、その違いによって様々なメリット・デメリットが生じてきます

そこで、本記事では、フリーランスの法人成りのメリット・デメリットを検討する前段階として、「個人事業主」と「法人」の主な違いを5つに分けて解説していきます。

この違いを理解しておくと、法人成りのメリット・デメリットも頭の中で整理されやすくなりますので、本記事で両者の違いをしっかり理解してください。

目次

個人事業主と法人の違いのサマリー表

フリーランスが事業を個人事業主として運営するか、法人を通して運営するかでは、大きく5つの点で違いが生じてきます。

この違いをまとめたのが下表となります。

個人事業主と法人の5つの違いを具体的に解説

上表にまとめた5つの違いをそれぞれ具体的に解説していきます。

違い①:事業運営主体の違い

まず、個人事業主と法人では事業運営主体が異なります。

ポイント:事業運営主体の違い

個人事業主:事業運営における権利義務の主体者=事業の経営者である個人

法人:事業運営における権利義務の主体者=法人(事業の経営者である個人とは別個の存在)

これを理解するためには、まずは法人とは何たるかを知る必要があります。

法人とは?

法人の基本約款(定款など)で定められた目的の範囲内で、権利を持つことや義務を負うことを法的に認められた組織や団体をいう

これの意味するところは、法人は個人とは別個の人格として存在するということです。

つまり、法人を設立して事業を運営する場合、その事業を運営しているのは法人を設立して実際に事業を経営している個人ではなく、あくまでも経営者とは別人格の「法人」が運営主体ということになるのです。

一方で、個人事業個人事業主として事業を運営する場合は、その事業を経営する個人がそのまま運営主体となります。

そのため、法人の場合は法人名義で契約を締結することができるが、個人事業主の場合は個人名義で契約を締結することになる

違い②:責任範囲の違い

法律上の「事業運営の主体者」が異なることにより、個人事業主と法人では責任範囲が異なってきます。

ポイント:責任範囲の違い

個人事業主:事業運営に係る権利・義務は全て個人に帰属する=個人が無限責任を負う

法人:事業運営に係る権利・義務は全て法人に帰属する=出資者や経営者個人としての責任は有限

違い①で解説した通り、事業運営における権利義務の主体は、個人事業主の場合は経営している人(個人)であり、法人の場合は経営者個人とは別個の存在であるその法人です。

これの意味するところは、事業運営から生じた財産(権利)や債務(義務)が、個人事業主の場合は全てその個人に帰属するのに対し、法人の場合は全てその法人に帰属するということです。

これが具体的に意味するところは下表の通りです。

違い③:設立方法の違い

個人事業主と法人では設立方法、事業の始め方も異なります。

ポイント:設立方法の違い

個人事業主:税務署に開業届を提出するのみであり、特段費用はかからない

法人:法務局で法人登記を行う必要があり、設立のための費用が発生する

個人事業主の場合は、税務署に開業届を提出すれば事業を開始できるため、非常にシンプルです。

特段コストも掛かりません。

実際には、税務署に開業届を提出しなくても事業運営は可能だが、白色申告しか選択できない

一方、法人を設立する場合、定款や設立登記の申請書、印鑑証明等を準備した上で、法務局で設立登記の申請を行う必要があります。

出資金(1円から)も必要ですし、法人登記に当たって10万円〜25万円程度のコストも発生します。

個人事業主と法人の設立方法の違いをまとめたのが下表です。

違い④:加入する保険制度の違い

個人事業主と法人では加入する保険制度も異なります。

ポイント:設立方法の違い

個人事業主:原則として国民健康保険と国民年金に加入

法人:社会保険(全国健康保険協会などの健康保険と厚生年金)に加入

日本では国民皆保険制度が採用されているため、個人事業主であっても法人であっても保険制度に加入する必要があります。

この保険制度について、個人事業主の場合は最低限、国民健康保険と国民年金に加入することになります。

一方で、法人の場合は社会保険に加入することが必須となり、法人の役員や従業員はその会社の社会保険に加入することとなります。

従業員を雇った場合など、個人事業主でも社会保険に加入する場合があるが、あくまでも雇用される従業員のための保険であり、事業主自身は加入できない(従業員5人以上の場合は社会保険への加入必須)

加入する保険制度が違うと、様々な点で違いが生じてきます。

違い⑤:適用される税制の違い

最後に、個人事業主と法人では課される税金の種類も異なります。

ポイント:設立方法の違い

個人事業主:事業から得た所得に対して「所得税」がかかる

法人:事業から得た所得に対して「法人税」がかかる
(ただし、役員報酬として得た個人の給与所得には「所得税」がかかる)

個人事業主の場合は所得に対して所得税が課される一方、法人の場合は所得に対して法人税が課されます。

所得税は個人に対して課される税金、法人税は法人に対して課される税金であり、税金の種類が異なるため、税金計算上のルールも様々な「違い」が生じてきます。

所得税と法人税の一般的なルールの違いは下表の通りです。

この税金のルールの違いにより、事業運営から生じた利益(所得)に対する税金の計算にも大きな違いが生じてくるため、それが法人化の税金上のメリット・デメリットとなります。

フリーランス(個人事業主)が法人成りすることのメリット・デメリットについて、税金部分についてフォーカスして解説記事は下記となりますので、こちらも合わせてご参照ください。

コチラの記事もチェック

まとめ

本記事ではフリーランスの法人成りのメリット・デメリットを検討する前段階として、「個人事業主」と「法人」の主な違いを5つに分けて解説しました。

本記事で挙げた個人事業主と法人の違いをまとめたのが下表です。

それでは今回は以上です。

法人成りや税金計算に関してご質問・ご相談がある場合は以下のコンタクトフォームからお気軽にご連絡ください。

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この記事を書いた人

海外ビジネスに関する課題解決を得意とするグローバルサポーター。

クロスボーダーM&Aだけではなく、海外事業に係る会計や、国際税務、海外子会社のマネジメント改善や海外子会社担当者とのコミュニケーションサポートも得意としている。

慶應義塾大学経済学部、Deloitte出身の公認会計士。前職ではオーストラリア・カナダにて計6年間の実務を経験。

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